なぜ人は「家を持つと落ち着く」と信じてしまうのか~「賃貸は無駄」と「将来の安心」が判断を狂わせる可能性~
住宅購入を考え始めたとき、多くの人は同じ言葉に行き着きます。
「そろそろ家を持ったほうが落ち着く気がする」。
この感覚は、個人の内側から自然に生まれたもののように見えます。
しかし実際には、かなり強い外部要因によっても形作られています。
代表的なのが、「賃貸は無駄」という言葉です。
この一言は便利です。
理由を考える必要がなくなり、比較も検討も終わらせてくれます。
問題は、この言葉は考えることを放棄させる方向に働くことです。
賃貸が無駄だと決めた瞬間、買う以外の選択肢は検討対象から消えます。
そこには、生活の柔軟性、移動の自由、やり直しの余地といった要素が含まれていたにもかかわらずです。
もう一つは、「将来の安心」を前借りする発想です。
家を買えば不安が消える。将来が安定する。
そう信じることで、今感じている迷いや不確実性を一時的に押さえ込むことができます。
しかし安心を前借りする行為は、同時に現在の選択肢を担保に差し出す行為でもあります。
将来の安心を確保するために、今の自由や可逆性を切り売りしていることに、本人はなかなか気づきません。
「家を持つと落ち着く」という信念は、こうした言説と心理が重なって生まれます。
それは必ずしも誤りではありません。
ただし、それは自分が検討した末の結論なのか、
世間の意見に流されただけの借り物の結論なのかは、区別する必要があります。
住宅購入の前に問うべきなのは、「買うかどうか」ではありません。
なぜ自分は今、買う方向に強く引き寄せられているのか。
その力は、本当に自分の意思なのか。
それとも、考え続けることを避けるための言葉に、思考を預けてしまっているだけなのか。
その区別がつかないまま下した判断は、後になっても検証できません。
なぜなら、その判断はすでに「安心」という言葉で正当化されてしまうからです。
だからこそ必要なのは、判断の前提そのものを言葉にして確認する作業です。
そのための「5つの問い」を私たちは用意しました。
その問いに向き合うも向き合わないも、それもまた、あなた自身の選択です。
